圧迫骨折③
こんにちわ!
今回は、圧迫骨折の保存療法の続きで、リハビリで使える、腹筋・背筋群の筋力トレーニングやストレッチ方法などをアウトプットしていきます!
まず、圧迫骨折への治療の原則
・安静と疼痛コントロール
これは、前回も記事にした、薬物療法による疼痛コントロールや骨粗鬆症に対する治療などです。
次に、圧迫骨折への治療の目的
・椎体への負担を軽減させること
・ROMexで可動域を確保し日常生活動作の制限を減らす
・コルセット装着による体幹筋の筋力低下の予防
あくまで個人的なものですが、、、
圧迫骨折では1つの椎体が潰れてしまうと、隣接する椎体にも負荷がかかり、ほかの椎体も圧迫骨折を起こしてしまう傾向にあります。
そのため、リハビリ介入時もそうですが、日常生活の中で椎体への負担を軽減させる動作や注意点を把握しておかなければなりませんね。
まず、圧迫骨折後のしてはいけない動作
・体幹の過屈曲・回旋
Ex)靴を履くときに前かがみになる
腰を曲げて下の物を拾う
お風呂で頭や足先を洗う際に前かがみになる
寝返りや起き上がりの際の体のひねり
後ろを振り向く動作 etc...
上記の動作を行うと、骨折部分への負荷がかかり、圧潰を進めてしまう危険性があるため注意が必要です。
では、どのように注意するか。
・靴を履くときは靴べらを使う
・腰を曲げずにしゃがんで物を拾う
・頭を洗う際は背すじを伸ばす、足先を洗う際は長柄ブラシなどの補助具を使う
・寝返りや起き上がりの際は、丸太様に体幹・下肢を同時に動かす
・腰をひねらず体全体で後ろを向く etc...
といったところでしょうか。
日常生活でよく行う動作が多いため、これらの注意点はしっかりと患者さまにお伝えすることも大事なことだと思います。
次に可動域の確保
圧迫骨折により胸腰椎の後弯変形が進むと身長が低くなり、円背といわれる姿勢になってしまうことがあります。
円背姿勢では
・頸椎前弯
・肩甲帯屈曲
・胸腰椎後弯
・骨盤後傾
・股・膝関節屈曲
と、ざっくりですが上記の特徴がみられることが多い印象です。
この姿勢が長期間持続することで、
前胸部(胸鎖乳突筋、斜角筋群、大・小胸筋)の短縮や腹直筋・腹斜筋群・腸腰筋の短縮が起こる可能性があります。
ですので、上記部分のストレッチやROMexなどで筋の柔軟性を高め、可動域の確保をしておくことで、急な動作時での疼痛の軽減や圧迫骨折後の腰痛の軽減につながるのではないかと思います。
それでは、ストレッチの種類をいくつか紹介します。
まずは前胸部のストレッチ
①頭の後ろに手を当てる
②肘をゆっくりと開いていく
③前胸部が伸びていることを確認しながら行う
①壁やドアに前腕を当てる
②そのまま体重を前方に移動させる
③前胸部が伸びていることを確認しながら行う
①頭の後ろで手を組む
②息を吐きながら手を上に伸ばす
③背筋が伸びていることを確認しながら行う
続いて腹部・背部のストレッチ
①背中に丸めたタオルを挟む
②両手をばんざいした状態でキープ
③腰背部の疼痛がない範囲で行う
④腹部が伸びていることを確認しながら行う
①両膝を抱える
②息を止めずにキープ
③腰背部の疼痛がない範囲で行う
④腰背部が伸びていることを確認しながら行う
最後に下肢のストレッチ
左図は椅子などの支持物をしようする場合
①股関節は伸展位
②膝を屈曲しつま先を持つ
③体幹が前傾しないよう意識
④片足立ちのため転倒注意
主に大腿直筋のストレッチ
右図は階段を使用した場合
①1.2段先の段に足をのせる
②体重を前方に移動させる
③体幹が前傾しないよう意識
主に腸腰筋のストレッチ
①片足を抱え込む
②対側下肢の膝が浮かないよう意識
他にもたくさんのストレッチがありますが、今回はざっくりと紹介しました。
ストレッチの時間は文献により様々な見解があり、100%決まったことがいわれていないため、ここには記載しませんが、個人的に様々な報告をみて、10-30秒がいいかなと思っています。
これはあくまで個人的な意見とストレッチする筋にもよると思いますので参考程度にしてください。
続いて、体幹筋の筋力強化
圧迫骨折受傷後はコルセットを装着していることが多く、体幹筋(特にインナーマッスル)の活動が低下してしまう傾向にあります。
それはなぜなのか。
そもそも、コルセットの効果として
①骨折部の動きを制限し疼痛を軽減させる
②腹圧を高め、体幹の固定性が高まり疼痛部位の負担が軽減される
が挙げられます。
特に②の腹圧を高めることに関して、
主に腹横筋や内腹斜筋の収縮により胸腰筋膜が緊張し、腰部多裂筋を中心とした伸展筋に緊張を与えて腰部脊柱の安定化や腹圧を高める作用があります。
コルセットを装着することで、その作用を補ってしまうため、腹横筋や内腹斜筋の活動する場面がなくなってしまい、筋活動が低下する傾向になってしまう。
コルセットを外す→腰痛が出現→痛いからコルセット装着
を繰り返し最終的にコルセットが手放せない、
慢性的な腰痛になっていく可能性もゼロではありません。
ですので、コルセット装着時から体幹筋のトレーニングを行い筋活動の低下を予防する必要があると思います。
それではいくつかのトレーニングを紹介します。
クランチ
①両膝を立てる
②おへそを覗き込む(肩甲骨が浮くぐらい)
③腹筋の収縮を意識しながら行う
腰背部の疼痛が出現するなら頭頚部の屈曲のみでもよい
①前腕と膝をつく
②腰椎が前弯しないよう一直線に
③息は止めずにキープ
④難易度を高めるなら膝をつかずに行う
はじめは10秒から行い、徐々に秒数を伸ばしていく
ニープッシュ
①股・膝関節は90°屈曲位
②膝と手でお互いを押し合う
③息を止めずに5秒程度実施
等尺性運動なので関節への負担は少ない
棒体操
①骨盤前傾位を意識
②息を吸いながら上肢を挙上
③息を吐きながら上肢を下す
④背筋の収縮を感じながら行う
肩関節のROM制限がある場合は可動範囲内で行う
ドローイン
①背臥位or座位
②息を吸うときにお腹を膨らます
③息を吐くときにお腹をへこます
④息を吐ききるまでお腹はへこまし続ける
⑤ASISの内側に手を当て筋が硬くなるのを確認しながら行う
はじめは5秒間吐き続ける
慣れてきたら徐々に秒数を伸ばしていく
ちなみに
腹横筋と腰部多裂筋の同時収縮することで、胸腰筋膜の緊張と腹腔内圧の上昇により腰椎の分節支持力の増加が得られる1)
腹横筋の筋活動は四つ這いでの上下肢挙上、片脚ブリッジ、サイドブリッジ、自重での体幹屈曲運動よりも座位でのドローインのほうが高かった2)
との報告があります。
このことから、ドローインは腹横筋のトレーニングに適している。
また、腹圧上昇に伴い腰部の安定性向上やコルセットの役割を果たしてくれるため疼痛軽減にもつながるといえます。
一見シンプルなトレーニングですが、
とても重要なトレーニングだと私は思います。
トレーニングの種類はまだまだありますが今回はざっくりと紹介させて頂きました!
何かの参考になれば幸いです。
今回も最後まで読んで頂き
ありがとうございました!!
参考文献
1)菅俊光:腰椎疾患に対するリハビリテーション-運動療法とセルフトレーニングを中心に- 認定医-指導医のためのレビュー・オピニオン
2)Okubo Y,Kaneoka K,Imai A,et al.:Electromyographic analysis of transversus abdominis and lumbar multifidus using wire electrodes during lumbar stabilization exercises.J Orthop Sports Phys Ther,2010,40:743-750
参考書
・石部伸之著者 まるごと図解 背骨のしくみと動きがわかる本 Functional Anatomy of the Spine 秀和システム P128-134,142